高CO2血症を伴う急性呼吸不全に対するHFNCの有効性

J Thorac Dis 2018;10:882-888

D: single center, retrospective cohort study

P: RR >25/min, P/F ratio ≤300 (O2 10L/min for 15min), PaCO2 >45mmHg

I: HFNC (within the same patients)

C: conventional oxygen (within the same patietns)

※Conventional oxygen→→→HFNC

 ΔCO2 before HFNC       ΔCO2 after HFNC

O: PaCO2 1 or 24 hrs after HFNC application

【感想】

・肺炎、COPD増悪で70%の患者を占める。患者ABG背景はpH 7.37, PaCO2 56.3, PaO2 77.2, P/F 213.2位の群。HFNC 40L/min, FiO2 0.45で数日間管理。

・酸素投与中にPaCO2は1mmHg上昇、HFNC装着後は4mmHg程度低下→臨床的には弱い効果か

・酸素投与数日間→HFNC装着数日間という順番なので、現疾患の治療がうまくいっていなければHFNCに不利な結果が出やすく、原疾患の治療がうまくいっていればHFNCに有利な結果が出やすい可能性あり

・肺炎以外の患者ではHFNC装着後1時間後は改善傾向だが、24時間後にリバウンド傾向

・もともとHFNCのCO2除去能に期待はしていなかったが、やはりそれほど大きな効果は望めないのかもしれない

サラダ味

どうも、小児集中治療医です。
 
日々の臨床業務をこなしながら浮かんできた、臨床上の疑問をリサーチクエスチョンとして定式化し、研究・発表して医療に貢献する、これぞ臨床医の醍醐味です。
 
というわけで、そろそろ長年の疑問を解決すべく、研究してみたいと思います。
 
長年の疑問。
 
 
 
 
サラダ味、ってなんなの
 
 
 
 
ソフトサラダせんべいなどでおなじみの”サラダ味”。よくよく考えてみると、さっぱり意味が分かりません。
まずはサラダ味に定義があるのかを調べます。既に調べられていたら研究する価値はありません。こんなときは成書、大辞林(第三版)を紐解いてみましょう。
 
・・・
 
残念ながら”サラダ味”という項目はありませんでした。気を取り直して、”サラダ”を調べます。
 
 
 
「サラダ」
生野菜をドレッシングやマヨネーズであえたものを基本に、果物やゆでた卵・ジャガイモやハム・肉などを加えた料理。サラド。
 
 
 
サラド。って。当たり前のように書かれても、何なの、サラ”ド”。方言?新たな疑問が浮かびましたが、この疑問は次の世代に託します。我々臨床家には時間がありませんから。
 
味ですから、”そのもの”でなくてよいわけです。となると、定量化できるかどうかがポイントになります。我々はどれくらいサラダ味だったらサラダ味と思えるのか。
 
ここは以下のようなスケール(0~10)を使って評価するのがよさそうです。
 
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
 
10は”サラダ”そのものにしましょう。10に近づくにつれ、真のサラダに味が近づくことになります。とりあえず、シーザーサラダが良いでしょう。シェフの気まぐれサラダとかはよくないです。
 
問題は0を何にするかです。サラダとは真逆なものがよいのか?まったく味がしないものが良いのか?
 
全く味がしないものの代表は空気や水ですが、人によっては「私evian派なのよね」とか「高尾山の山頂は空気がうまい!」とか言ったりするのであてになりません。
 
 
 
完全なる無味。涅槃の境地。
 
 
 
非常に悩ましいのですが、今まで食べた中で最も味がしなかったものが”フグの刺身”だったので、0は”フグの刺身”ということにします。これには大多数の人の賛同を得られることはもはや自明の理と思いますが、先行研究はないので、世界中の小児集中治療医にアンケート調査も行いましょう。
 
 
 
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
フグ刺し        シーザーサラダ
 
 
 
もう少しでスケールができそうです。後は中間の5を何にするか?
 
よく見ると、コース料理のようにも見えます。
 
フグの刺身とシーザーサラダの間に提供するもの。
 
ここはお口直しの柚子シャーベット一択で行きたいと思います。
 
 
 
 0       5       10
フグ刺し  柚子シャーベット シーザーサラダ
 
 
 
・・・
ふう、これが北米やオーストラリアの小児集中治療医が理解できるギリギリの線でしょう。世界基準の研究をするのは大変です。
 
いきなり多施設研究は無理なので、単施設PICUの医師、看護師10人ずつくらいに、入念な歯磨き後、ソフトサラダせんべいを食べてもらって、0-10のどこに近いかを「せーの」で指差ししてもらうパイロット研究をしたいと思います。往々にして医師と看護師は意見が異なりますし、0=フグの刺身を指さされた時のことも考えて、平均値ではなく中央値を見たいと思います。
 
・・・
 
そろそろ現実逃避をやめて論文完成とアブストラクト作成にとりかかかります。
 
以上です。
 

重症小児おけるDEX長期使用と薬物離脱

J Pediatr Pharmacol Ther 2017;22:453-460

D: single center restrospective cohort study

P: <18 years old, DEX for longer than 48 hrs, in PICU & CCCU

I: none

C: none

O : withdrawal (24/68)→agitation, fever, vomiting/retching, loose stools, decreased sleep

predictive factor→a cumulative dose of 107ug/kg before weaning→AUC 0.65 (0.49-0.78)

【感想】

・DEX max 2ug/kg/hr!!!

・WAT-1 score使用し、2人の医師が診断

オピオイドの併用期間は関連しそう

・単施設のため減量前の累積投与量の絶対値は参考にならないが、累積投与量は重要そう

 

急性脳症による神経学的後遺症の予測ルール

BMJ Open 2017;7:e016675

D: multicentre retrospective cohort

P: < 16 years & Complex febrile seizure (patients with ahistory of neurological disease and those included in the deriviation cohort were excluded)

I:  refractory status epilepticus or consciousness disturbance and/or hemiplegia at 6 hrs from onset or AST >90 IU/L within 6hrs of onset   

C: nothing above

O: PCPC ≥2

→AUC 0.915 (0.825-1.000), PPV 0.149, NPV 0.999

【感想】

・日本からのエビデンス、いいね

・急性脳症ではなく、複雑型熱性けいれん患者における神経学的後遺症?

・6時間時点の意識障害、半身麻痺は正確な所見を取り辛い

・PCPCはsoft outcomeすぎる

 ・多変量解析に問題ありか

釈迦に説法

どうも、小児集中治療医です。

 

釈迦に説法、という言葉があります。大辞林(第三版)によると、

 

”よく知り尽くしている者に対して教える愚かさのたとえ。”

 

ということのようです。ポイントは「よく知り尽くしている者」ということです。それでは具体的な使い方を見てみましょう。

 

 

 

先日の事です。

私事ですが、右耳の聞こえが悪くなったことがありまして、数日間様子を見ても今一つ改善する様子がなかったため、勤務先の大学病院の耳鼻科の先生に診察していただくことにしました。

私も一応、小児科医ですから自分を襲った突然の難聴に対して鑑別診断を挙げるわけです。滲出性中耳炎、突発性難聴、鼓膜穿孔、、、あまり挙がらないな。

 

耳鼻科の先生は私と同年齢位か少し若い方で、外来で忙しいであろうに、とても優しくて礼儀正しく、こちらも恐縮しきりでした。

 

耳「何か思い当たるきっかけはありますか?」

私「お恥ずかしい話ですが、耳かきをしてから聞こえが悪いような気がして、、、多分伝音性難聴だと思うんですよ。耳は痛くないんですけど、鼓膜穿孔など起こしていないか心配で、、、業務にも支障をきたしてしまって、話しかけられても何度も聞き返してしまう始末で、、、お電話してしまいました、すいません。」

 

聞かれてもいないことを話しつつ、ちょっと話し過ぎたなと思って言い訳で固めてみます。

 

耳「それでは耳鏡で拝見させていただきます。」

私「宜しくお願いします。」

・・・

・・・

耳「左は正常ですね。」

私「よかったです。」

耳「右も拝見させていただきます。」

・・・

・・・

・・・

耳「・・・。耳垢、、、。ですね、、、。」

私「・・・・・・耳垢、、、ですか、、、。」

・・・

・・・

・・・

耳「写真、ご覧になりますか。」

私「・・・はい。」

 

ごっつり、耳垢たまってました。垢というか、もはや”壁”みたいになっており、耳鼻科の成書において、第1章:耳垢、の項に載せても恥ずかしくないくらい、いや、むしろNEJMとまではいかなくてもJAMA位なら余裕で掲載されうるような、それはもう立派な耳垢でした。

 

耳「こちらが、釈迦に説法になりますが、、、耳垢になります。」

私「・・・そのようですね。。。」

耳「釈迦に説法になりますが、耳掃除に使う綿棒のサイズが大きすぎるのかもしれません。」

私「・・・なるほど。」

耳「釈迦に説法になりますが、耳垢水(耳垢を溶かす魔法の水)を処方しておきます。」

私「ありがとうございます。」

耳「次回再診されますか。」

私「いえ、多分大丈夫です。ご迷惑おかけしてすいません。」

 

たかだが耳垢で大学病院の耳鼻科の先生に診察を仰ぐという大失態をしてしまい、深く反省した次第でした。

 

 

ただ、この場を借りて2点だけ釈明させてください。

 

 

 

・私は耳垢のスペシャリストではない、ということ

 

・仮に釈迦であったとしても、右耳は詰まっていた、ということ

 

 

 

以上です。