釈迦に説法

どうも、小児集中治療医です。

 

釈迦に説法、という言葉があります。大辞林(第三版)によると、

 

”よく知り尽くしている者に対して教える愚かさのたとえ。”

 

ということのようです。ポイントは「よく知り尽くしている者」ということです。それでは具体的な使い方を見てみましょう。

 

 

 

先日の事です。

私事ですが、右耳の聞こえが悪くなったことがありまして、数日間様子を見ても今一つ改善する様子がなかったため、勤務先の大学病院の耳鼻科の先生に診察していただくことにしました。

私も一応、小児科医ですから自分を襲った突然の難聴に対して鑑別診断を挙げるわけです。滲出性中耳炎、突発性難聴、鼓膜穿孔、、、あまり挙がらないな。

 

耳鼻科の先生は私と同年齢位か少し若い方で、外来で忙しいであろうに、とても優しくて礼儀正しく、こちらも恐縮しきりでした。

 

耳「何か思い当たるきっかけはありますか?」

私「お恥ずかしい話ですが、耳かきをしてから聞こえが悪いような気がして、、、多分伝音性難聴だと思うんですよ。耳は痛くないんですけど、鼓膜穿孔など起こしていないか心配で、、、業務にも支障をきたしてしまって、話しかけられても何度も聞き返してしまう始末で、、、お電話してしまいました、すいません。」

 

聞かれてもいないことを話しつつ、ちょっと話し過ぎたなと思って言い訳で固めてみます。

 

耳「それでは耳鏡で拝見させていただきます。」

私「宜しくお願いします。」

・・・

・・・

耳「左は正常ですね。」

私「よかったです。」

耳「右も拝見させていただきます。」

・・・

・・・

・・・

耳「・・・。耳垢、、、。ですね、、、。」

私「・・・・・・耳垢、、、ですか、、、。」

・・・

・・・

・・・

耳「写真、ご覧になりますか。」

私「・・・はい。」

 

ごっつり、耳垢たまってました。垢というか、もはや”壁”みたいになっており、耳鼻科の成書において、第1章:耳垢、の項に載せても恥ずかしくないくらい、いや、むしろNEJMとまではいかなくてもJAMA位なら余裕で掲載されうるような、それはもう立派な耳垢でした。

 

耳「こちらが、釈迦に説法になりますが、、、耳垢になります。」

私「・・・そのようですね。。。」

耳「釈迦に説法になりますが、耳掃除に使う綿棒のサイズが大きすぎるのかもしれません。」

私「・・・なるほど。」

耳「釈迦に説法になりますが、耳垢水(耳垢を溶かす魔法の水)を処方しておきます。」

私「ありがとうございます。」

耳「次回再診されますか。」

私「いえ、多分大丈夫です。ご迷惑おかけしてすいません。」

 

たかだが耳垢で大学病院の耳鼻科の先生に診察を仰ぐという大失態をしてしまい、深く反省した次第でした。

 

 

ただ、この場を借りて2点だけ釈明させてください。

 

 

 

・私は耳垢のスペシャリストではない、ということ

 

・仮に釈迦であったとしても、右耳は詰まっていた、ということ

 

 

 

以上です。